アンチエイジングだけではない。多汗症はボトックス治療で治す

暑い日や激しい運動をした時に人は汗をかきます。これはごく普通のことなのですが、特に激しい運動もしていないのに汗が頭や額から滴り落ちたり、暑くもないのにワイシャツの背中や脇は汗でびっしょりだという人もいます。
また人は緊張すると手や足の裏に汗をかきますが、その量がとても多く、手の汗で紙が湿ってしまい、大事なテストや書類に記入が出来ず困っているという人もいるのです。
これらの症状は多汗症と言われるもので、通常は交感神経の調子が狂うことから発症するとされています。以前は手術による汗腺除去方法が一般的な解決方法でしたが、その研究や治療方法も進歩し、今では切開手術をしなくても多汗症を解消または軽減できる方法も確立されています。多汗症の治療にはどのようなものがあるのか、その方法や効果をお伝えしていきます。

ボツリヌス菌の活用

ボトックスという言葉を耳にされた事はないでしょうか。ヒアルロン酸と共に美容外科でシワ改善のためのアンチエイジングとして使用されています。
ボツリヌス菌から作られるボトックス注射には筋肉の収縮を一時的に弱める働きがあるのです。
汗はアセチルコリンという神経伝達物質の指示によって、エクリン汗腺から汗を分泌しています。という事は、アセチルコリンの働きを阻止すれば汗を抑えることができるのであって、その抑える役割はボトックスが担えるという見解から、多汗症の治療にボトックス注射が使用されるようになりました。
ボツリヌス菌そのものは強い毒素を持っています。しかしボトックス注射はボツリヌス菌そのものを使用するわけではありませんので、感染症などを心配される必要はありません。今でこそ多汗症の治療に使われていますが、もともとは斜視や眼科痙攣を治療するためのものです。多くの医療機関で採用されているボトックス注射は、アメリカに会社をもつアラガンが販売している製剤で、FDA(米国食品医薬品局)にも承認されています。
広く知れ渡るようになってきたボトックスによる治療ですが、施術を受ける際にはしっかりとした病院やクリニックを選択して下さい。安い金額に惹かれて行ったら、アメリカや欧州、日本ではほとんど使用されていない安価な中国製のA型ボツリヌス毒素製剤BTXAを使っていたということもあります。一概にどれが悪いとは言えませんが、安全面を考慮するに越したことはありません。

ボトックスの治療

ボトックスの治療は非常に簡単で、短時間で済むのが特徴です。
診察に行き、その日のうちに受けることも可能です。汗の気になる部分に直接ボトックスを皮下注射します。これだけですので、施術時間は約5分から10分で終わり、そのまま帰宅できます。即効性というよりは徐々に変化が現れるタイプで、約1週間後には汗の量の変化が実感できるのではないでしょうか。
後日通院も必要ありませんし、注射による痛みや腫れもほぼありません。お風呂に入れたりと何ら日常生活を妨げるものはありませんので、普段通りに学校や会社に行け、人に知られるような心配もありません。
せっかくボトックス治療をするのであれば、一緒にレーザー治療を組み合わせることも考えられても良いかもしれませんね。この組み合わせによって汗の量と細菌の繁殖を抑えられますので、汗の嫌な匂いで悩む事もなくなります。

ワキガも一緒に治るのか?!

多汗症でも脇に大量の汗をかく方の場合は、ワキガについても悩んでいる傾向があります。ボトックス治療で多汗症が治ればワキガも治るのでしょう?と言われるのですが、多汗症の汗の汗腺とワキガの汗の汗腺は別ですので、ボトックス注射をしたからといってワキガを治すことはできません。
多汗症の汗はエクリン汗腺から出ています。エクリン汗腺の汗の目的は体内の熱を放出し、体温を下げる役割のもので水分がほとんどです。そしてもう一つの汗腺がアポクリン汗腺。こちらは脂肪、鉄分、アンモニアなどといった体内の老廃物を汗として排出する汗腺です。この汗腺がワキガ臭の原因なのです。
ボトックス治療はエクリン汗腺の働きを弱めるのには有効なのですが、アポクリン汗腺には働かないのです。ですのでワキガは治せないと言えます。ワキガの完全な血量には別の方法が必要なのですが、多汗が治まればその分雑菌の繁殖を防ぐ事ができますので、ある程度の臭いは抑えることができます。

まとめ

多汗症は今や治せる症状です。その方法も切開手術から注射によるものまでとライフスタイルに合わせた選択枠があります。多汗症のために好きな人の手が握れない、人前に出るのが恥ずかしい、汗からくる体臭が気になるとコンプレックスを抱えてしまう前に、悩んでいらっしゃる方は一度受診されてみてはいかがでしょうか。
思っていたよりも呆気なく解決できるかもしれませんよ。